相続は、通常以下のような流れに沿って手続きを行います。※は、行政書士に依頼できる手続きです。
亡くなってからの期限 | 手続き |
---|---|
7日以内 |
死亡診断書の取得 死亡届の提出 死体埋葬火葬許可証の取得 |
10~14日以内 |
年金受給停止の手続き・年金受給権者の死亡届の提出 国民健康保険の資格喪失届の提出 介護保険の資格喪失届の提出 住民票の抹消届・住民票の除票の申請 世帯主変更届の提出 |
期限はないが、なるべく早く |
遺言書の確認 ※ 遺言書の検認 相続人の確定 ※ 相続財産の調査 ※ 遺産分割協議の開始 遺産分割協議書の作成 ※ 不動産の名義変更登記 金融機関への連絡 ※ 葬祭費・埋葬費・高額医療費・生命保険の請求 ※ 公共料金や各種サービスの変更と解約 ※ |
3か月以内 |
相続放棄または限定承認 |
4か月以内 |
所得税の確定申告(準確定申告) |
10か月以内 |
相続税の申告と納付手続き |
1年以内 |
遺留分侵害額請求 |
5年以内 |
遺族年金の受給申請 相続税の税務調査への対応 |
相続が開始された後は、以下のフローチャートに従って手続きを進めて行くことになります。
このあと、各相続人が相続によって取得した財産の名義変更手続き、及び相続税の申告手続きをすることになります。
相続には、ご自身でできる手続きと、専門家が携わることが多い手続きがあります。専門家の中でも、弁護士や税理士、司法書士、行政書士等の士業がそれぞれ専門とする分野があります。例えば、遺産分割協議の際にトラブルが発生した場合など、紛争に発展し、法律が関わる部分は弁護士の独占分野となります。また、相続放棄の手続きについては、家庭裁判所に必要書類を提出することになり、依頼を受けられるのは弁護士か司法書士になります。
さらに、不動産の相続登記についても、弁護士か司法書士しか携われませんが、弁護士は基本的に相続登記等の業務は扱わないため、主に手続きを行うのは司法書士になります。なお、相続税の申告や、準確定申告といった税務業務は、税理士の独占業務で、弁護士や司法書士、行政書士も携わることはできません。
行政書士は、以上のような他の士業の独占分野を除いた多くの相続業務に携わることができるため、手続きごとに専門家を探し、依頼する手間を削減することができます。また、他の士業に依頼する場合より、費用を抑えることができます。例えば、遺産分割協議書の作成を依頼する場合の費用を比較すると、行政書士への依頼は概ね10万円前後(当事務所では6万円~)となりますが、弁護士への依頼は概ね15~30万円となります。行政書士は書類作成の専門家として、相続手続きを進めていく上でほぼ必要不可欠ともいえる、「相続関係説明図」、「相続財産目録」、「遺産分割協議書」を作成することができ、相続手続き全般を幅広くカバーできます。
ここでは、相続における重要な事項について、より詳しく解説していきます。
1. 遺言書
先ほどのフローチャートにも出てきたように、「遺言書」には大きく分けて3つの形式があります。
1つ目は、自筆証書遺言。これは、遺言を作成する人がすべて(財産目録を除く)自筆で書く遺言書です。紙とペンさえあれば、自宅でもどこでも気軽に作成でき、修正も簡単で、作成費用もかかりません。ただし、作成には要件があり、これを満たしていないと無効になる恐れがあるほか、紛失したり、書き換えられたり、隠されたりするリスクもあります。そのため、2020年7月10日からは、法務局で保管してもらえる「自筆証書遺言書保管制度」が開始されました。費用は1件3,900円で、この制度を利用すると開封のための裁判所の検認の手続きが不要になります。この制度を利用しない場合、自筆証書遺言を基に相続手続きを開始させるためには、裁判所の検認が必要になります。相続人の手間が増えてしまうこともデメリットの一つだといえます。
ちなみに、2019年1月13日からは、相続財産の全部または一部の目録を添付する場合は、その目録についてのみパソコンで作成することが認められるように法律が改正されました。その他の部分は、すべて遺言者が自筆(手書き)で全文を書く必要があります。
2つ目は、公正証書遺言。公正証書遺言は、公証人という法律の専門家が本人が話した内容を聞きながら書き記すもので、原則的に公証役場で作成します。証人が2名以上必要で、内容を確認して署名、捺印をし、原本を公証役場で保存します。自筆証書遺言に比べて、手間や費用がかかりますが、要件を満たさないため無効になるというリスクも回避できるほか、公証役場で預かってもらえるため、紛失のリスクも少ないというメリットがあります。また、自筆証書遺言のように、全文を自筆する必要がないため、体力が弱ったり、病気等のために自筆が困難になった場合でも、公証人に依頼すれば遺言を残すことができます。また、公正証書遺言は、裁判所での検認の手続きをする必要がないため、相続開始後、速やかに遺言の内容を実現することができます。
3つ目は、秘密証書遺言。これは、遺言者が自ら遺言書を作成し、公証役場に証明を依頼します。公証役場では、遺言書を封印し、公証人と2名以上の証人が遺言書の「存在」を確認します。遺言の内容を一切誰にも知られずに済む一方、形式に不備があったとき場合などは、遺言書が無効になる恐れがあります。また、他の方法に比べて手間と手数料がかかり、無効になるなどのリスクもあるため、利用する人は非常に少ないです。
遺言書は基本的に遺言者自らもしくは公証人でなければ作成することができず、行政書士が代わりに作成することはできません。ただし、行政書士は、遺言書の書き方の指導や文案作成などのサポートを行うことができ、一定の要件を満たさないため遺言書そのものが無効となってしまうリスクを避けることができます。公正証書遺言や秘密証書遺言の作成には証人が必要となりますが、証人には制限があり、未成年者や推定相続人、受遺者(遺言によって財産をもらう人)、その配偶者や直系血族等は証人になれません。公証役場で紹介してもらうこともできますが、その分費用もかかります。行政書士は、証人のうちの一人となれるため、他に証人になってくれそうな方に心あたりがない場合には、ご相談ください。行政書士は遺言書の原案作成の段階からサポートが可能で、必要書類の取り寄せ、公証人との打ち合わせも代わりに行うことができる他、遺言書執行者として遺言内容を実現させるためのお手伝いをすることもできます。
2. 相続人の調査
行政書士は、相続人の調査にも携わることができます。相続手続きを行う前提として、相続人が誰であるかを正確に把握する必要があります。相続人確定のためには、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍をすべて取り寄せ、「相続人は誰なのか」を特定し、その人たちの生存確認までしなくてはなりません。相続人調査では、直接市町村の窓口に出向くか、郵送で戸籍を取り寄せる必要がありますが、一か所ではなく、あちこちの役所から取り寄せることが一般的であるため、非常に手間がかかります。場合によっては古い戸籍も取り寄せる必要がありますが、昔の戸籍は手書きでしかも毛筆体で書かれているため、解読するだけで一苦労の場合も多いです。戸籍を読み解くことをさらに難しくさせているのが、戦前と戦後に行われた計6回に渡る戸籍の改製です。戸籍が改製されると、それまでの戸籍は閉鎖され、新しく戸籍が作り直されます。戸籍が改製されるごとにその様式が変更され、記載内容も異なるため、それぞれの様式の特徴を理解することが大事です。
また、法定相続人が兄弟姉妹となる場合や、再婚した人の相続、代襲相続(孫や甥、姪が法定相続人になる場合)は、より複雑になります。被相続人に認知した子がいたり、孫や甥や姪と養子縁組していた場合など、家族であっても相続人にあたる人を把握していないケースが多くあります。一般の方が、複雑な戸籍関係を把握し、役所から漏れのないようにすべての戸籍を取り寄せるのは、大変な苦労を伴います。行政書士は、このような相続人の調査を代行することができるほか、複雑な相続人の関係をひと目で分かるようにまとめた「相続関係図」の作成も行うことができます。相続人が誰になるか、自分たちで把握していたとしても、法務局や金融機関、裁判所などに伝える際にいちいち戸籍謄本を全部持参し、見せるのは大変なことです。相続人調査が終わったら、相続人関係図を作成することをお勧めします。
3. 各相続人の相続分
相続人が複数いる場合、それぞれの相続人が被相続人から譲り受ける権利義務の割合のことを「相続分」といいます。相続分も民法でその割合が決められています(法定相続分)。被相続人が遺言によって指定した相続分(指定相続分)がある場合には、そちらの方が優先します。法定相続分は、以下のようになっています。
相続順位 | ||
---|---|---|
子供がいる場合 |
配偶者
1/2 |
子供
1/2 を人数で分ける |
子供がおらず、父母がいる場合 |
配偶者 |
父母等 |
子供と父母がともにおらず、 |
配偶者 |
兄弟姉妹 |
※1 子・直系尊属(親、祖父母など)・兄弟姉妹が複数いる場合には、法定相続分を頭割りします。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の場合には、父母の両方を同じくする兄弟姉妹の相続分の1/2となります。
※2 相続人となるべき子供や兄弟姉妹が相続開始時に死亡している場合には、「代襲相続」といって、孫やひ孫、甥や姪等が代わって相続することができます。
図のように、亡くなった方の配偶者は必ず相続人になりますが、配偶者以外の遺族については、順位が決められています。先順位の人がいる場合には、後順位の人は相続人になれません。
4. 相続財産調査
遺産相続や遺産相続をするにあたっては、相続財産に何があるのか、その評価はどのくらいか、負債はないか等を調査し、把握しなければなりません。遺言書や相続財産について何の情報も遺志も残さず、突然ある日家族が亡くなってしまったら…。残された家族は途方に暮れると思います。このように、遺言書も相続財産目録も無い場合に必ず行わなければならないのが、相続財産調査です。
遺産には、預貯金や株式、不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。他人とのお金の貸し借り、インターネットバンキング口座の存在などは家族であってもその存在を把握していない場合がありますが、これらひとつひとつを漏れなく調べて相続財産の範囲を確定し、相続人の間でその認識を一致させる必要があります。これらの相続財産調査の結果を分かりやすくリストにまとめた「相続財産目録」の作成には法的義務がありませんが、遺産分割協議が円滑に進んだり、相続税申告の時に分かりやすいように、作成することをお勧めします。
一般的に、財産調査の対象となるのは、以下の通りです。
その他にも、個別の場合に相続財産となるものがあります。やり方が分からない、自信がない、時間がない等の場合には、専門家にご相談ください。
5. 相続放棄
先ほどの「相続財産目録」の項目で見てきたように、相続財産には不動産や預貯金などのプラス財産だけでなく、借金などのマイナス財産もあります。マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合も考えられますが、そのような場合にも相続人がすべて承継しなくてはならないとなると、酷な結果になります。そこで、そのような場合にも、相続の承認や相続の放棄の制度によって、相続人が相続するか、または拒否するかを選択する自由が認められています。
単純承認…プラスの財産とマイナスの財産、すべてを引き継ぐ
限定承認…被相続人のプラスの財産の範囲内で、マイナスの財産を相続する
限定承認は、正確に計算してみないと、プラスの財産が多いかマイナスの財産が多いかはっきり分からない場合などに利用されますが、相続人全員で行わなければならず、手続きが非常に煩雑である割にメリットが少ないという理由で、実際にはあまり利用する人はいません。単純承認を選ぶ人が圧倒的に多いといえます。
相続放棄…被相続人のプラスの財産とマイナスの財産、すべて引き継がない
基本的には、プラス財産よりもマイナス財産の方が多い場合には、この相続放棄を選択することになります。相続放棄は限定承認と異なり、相続人一人でもできるため、相続放棄するかどうか、自分の意思に従って決めることができます。ただし、一度相続放棄をしてしまうと撤回ができなくなるため、慎重に検討することが大切です。
相続の開始があったことを知った日から3か月を経過すると自動的に単純承認したものとみなされます。この3か月間を「熟慮期間」といいます。相続について、どうするべきかじっくりと考えるための時間が与えられているのです。相続放棄をする場合は、この熟慮期間(3か月以内)に、相続人が家庭裁判所に「相続放棄の申述」をすることになります。
6. 遺産分割協議
遺産分割協議とは、被相続人の財産について、法定相続人全員でどのように分割するか話し合うことです。これら法定相続人全員が遺産分割について話し合った結果をまとめたものが、「遺産分割協議書」です。遺産分割協議は基本的に、遺書がなく、法定相続分と異なる遺産分割を行う場合に行います。また、遺言書があっても、被相続者の遺志と異なる遺産分割を行う場合や、遺言書に記載のない相続財産のある場合に、遺産分割協議が必要となります。
相続人が遠隔地に住んでいたり、都合が合わない場合などには、電話や郵送での話し合いも可能ですが、遺産分割協議を行った結果には全員が同意する必要があります。「遺産分割協議書」には、相続人全員が署名、実印を押印し、全員分の印鑑証明を添付して、各相続人が同じものを所持します。ただし、「遺産分割協議書」に預貯金の残額を記載した場合でも、利子がついて金額が変わってしまうと相続財産として認められなくなったりもします。また、不動産の所有地と登記が合っていない場合などには「遺産分割協議書」を作成し直しになってしまいますので、行政書士や他の専門家からのアドバイスを受けることをおすすめします。ちなみに、「遺産分割協議書」は、下記のような流れで作成します。
7. 遺言執行者
被相続者の遺言内容を実現するために、相続財産の管理の他、一切の手続きを行う人が「遺言執行者」です。相続人のうちの1人が遺言執行者になることが多いですが、相続争いが懸念されたり、遺産金額が高額な場合などは、弁護士や行政書士などの専門家が指定される場合も少なくありません。
具体的な任務としては、以下のような手続きをします。
遺言執行者には遺言内容を実現するために様々な権限が付与されています。以下の手続きは、遺言執行者が単独で実行できます。
一方、遺言執行者にしか権利を与えられていない手続きもあります。
上記の2つの手続きは、他の相続人が行うことができません。これらの手続きをする必要がある場合には、必ず遺言執行者を選任しましょう。
1.お問い合わせ
まずは、お問い合わせフォーム、お電話またはメール、FAXでお問い合わせいただき、ご相談内容やご依頼の概要をお聞かせください。もちろん無料です。
2.ご相談
お顔合わせをして、丁寧に詳しいお話を伺います。当方が出張致しますが、Zoomでの面談も可能です。被相続人のご氏名、亡くなられた当時のご住所、本籍、親族関係、財産の状況等、基本的な内容についてお聞きします。その情報を基に、今後必要となる手続きの概略をお伝えします。
3. お見積りとご契約
メールで「費用のお見積り」と「具体的な業務の内容」をお送り致します。報酬額、業務の内容等についてご了承頂けた場合には、正式に委任契約を締結していただきます。契約を証する書面にご署名・押印をお願い致します。また、報酬額の一定割合(着手金)を事前にお預かりしますので、ご了承ください。
4. 業務の遂行
委任契約の締結後、速やかに業務に着手致します。業務の進捗状況をメールで随時お知らせし、ご質問やご不安な点があればいつでもお答えします。
5. 業務完了/清算
委任契約においてお約束した業務がすべて終了した時点で、相続業務の完了となります。お預かりしていた書類等をお返しし、残りの報酬額をお支払い頂きます。
6. アフターフォロー
相続の手続きが終わった後も、「これってどうするんだっけ?」というように、ご不明点が出てくることも多々あります。当事務所では、ご依頼の業務が完了してからも、3か月間は無料でご相談に対応させていただきます。また、新しいご依頼に関しては、初回無料でご相談が可能です。